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GOTH

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 僕が学生時代にちょうど養老孟司さんの「唯脳論」という本が大流行だった。もちろん東大医学部の教授でいらした頃の本である。彼の弟子(助手)にちょっと変わった方がいた。なんどかセミナーで話を聞いたことが会ったが、布施英利さんという。このかた書いた本もちょっとしたブームを1990年代中盤に巻き起こした。「禁じられた死体の世界」。彼の書いた本?エッセイ?写真集?ムック?、なかなか分類できにくい本である。(まだビレッジバンガード(=若者向けの変わった本屋。)あたりで売ってんじゃないかな?)この本の販売をきっかけに俗に言う「メメントモ・モリ」ブームがやってくる。実は僕も大学で死体やフリークスの写真を撮っていた写真家の研究をしていた。だいたいわかってきたと思うけどこの「禁じられた死体の世界」は死体の写真をあつめそれと一緒に死体と現代社会との関わり、封じ込めみたいなところを散文調に論じてあるまか不思議な本であった。
 いきなり昔の話を書いたが、いまたまたま横にある小説が先に書いたことを思い起こさせたんだ。乙一著「ゴス:GOTH 夜の章」。平成13年に出版された「GOTH リストカット事件」角川書店のものを2巻に分けたものの一つである(文庫版)。
 現代社会の死への意識は僕が若いときに感じた死体への意識と変わっていないようだ。いろんな事件のせいか、死へのハードルが低くなっている。そのハードルから少し顔を出したり、引っ込めたりするような主人公の話が妙にすがすがしい。(ハードル自体を高くしたのは現代人の衛生と効率性を追求するものからではあるが。)これをすがすがしいと書くのはちょっと違うような気がするが、すがすがしい(「清々しい」というのは正直な心が見えると理解する。)と書きたい。「メメントモ・モリ」というのは「死を想え」という意味だ。そこに日常、死体にあうはずのない自分が死体にあい、新しい感情を見つける。そんなすがすがしさがある。うー、表現ができない。こんな時はだいたい自分の考えもまとまってないときだ。この本の中では死体とあいそして、奇怪な事件の現場を第三者として観察する主人公のはなしである。その短編をまとめたものである。かれはそれを警察に通知するのでなく、自分の眼でみている。それだけだ。単調になりがちな話をかなりトリッキーな小説に仕上げ、日常の裏側の話として書き込んでいる。
 久しぶりに学生時代を思い出させてくれた一冊だ。
 次に本について書くときは、学生時代の研究書つながりのものをちょっと書かせてもらう。

追伸:後から読み返すと、僕の一番嫌いな学生時代の自分の文章でとってもいやです。自分の戒めのためにのせます。

by nobuokajiokaivy | 2005-08-03 14:59 | つれづれ
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